手作り味噌の魅力、それはマイ菌(私の菌)の育成
味噌は糀と大豆と塩からできています。単純に仕込んだままでは味噌にはなりません。繰り返しますが仕込んだものが味噌になるためには、そして味噌として美味しくなるためには、人の力ではなく、菌たちの働きによって美味しくなり完成します。
その菌たちは自然に存在する酵母菌や一部の乳酸菌たちが主役です。手作り味噌づくりには、もうひとつの菌の種類が加わります。人の手にいきている常在菌です。手作業で、なおかつ素手で味噌を仕込むときに加わる菌たちです。
私達を守る常在菌たち
常在菌とは、人の体に住み着いている微生物で、皮膚や気道そして消化器官に住み着いています。病原菌とは異なり、人が生きてゆくうえで大切な菌たちです。全ての常在菌が良い働きをするということはなく、一部の良い働きをする菌と、圧倒的多数なのは日和見菌といって、良くも悪くもどっちつかずのような菌で場合によっては良くも悪くも働くという個性のある菌もいます。わかりやすく分類すると善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌と言われます。
人の身体の各器官に特徴的な菌たちが住んで、様々な良い働きをしています。常在菌のうち腸内に住むものを腸内細菌と言い、重要視されています。腸内細菌は小腸に1兆個、大腸に100兆個ほど存在するそうです。さらに身体の外の皮膚には1兆個もの常在菌があるそうです。腸内よりも皮膚のほうが外界にさらされているため、より強靭な菌たちが生きていると言えるでしょう。私たちの身体は、まるで菌の鎧をまとっているような感じで菌たちに守られて生かされ生きているのです。
強靭な鎧である菌たちを除菌滅菌してしまったら、おそらく人の身体は正常に保つのが難しくなるでしょう。私達の免疫の力というのは、これら菌たちの鎧によって保持されて、その機能を発揮されているといってもよいでしょう。
手作り味噌では、手作業でおこなうときに、自分自身にすみついている常在菌が仕込み味噌に取り込まれます。塩分があるため、全ての菌が生きられるわけではありませんが、特に外界の過酷な環境でも比較的強い、生きられる菌達がいるわけですが、それらの自らの身体を守っている菌達が味噌の熟成といっしょに熟成のお手伝いをしたとしたら、なんてすばらしいことでしょう。
そして熟成後に完成した味噌は、きっとご自身を助ける力のある味噌となっているに違いありません。それは唯一無二のように、その人にとったらベストな味噌でしょう。
味噌は、ひとりひとり味が違う。それも魅力
味噌づくりをグループで行ったりする場合に、同じ材料で、同じ時間に、同じように作ったはずが、1年後持ち寄った味噌の味がそれぞれ違うということがおきますが、それは熟成の環境の違いもありますが、それぞれのもつ常在菌たちの種類が違っている結果の味の違いなのかもしれません。だれの味噌が一番良いかという議論ではありません。その方が仕込んだ味噌は、その方にとってのベストな味噌です。
味噌は生き物のようです。ご自身が育てた(熟成)味噌を、さらに次の年にもタネ味噌として継承してゆくと、どんどんマイ味噌というように成長してゆくでしょう。

