北海道、伊藤秀幸さん(無肥料自然栽培・FF農法)との出会い
波乱万丈!?「いったい、どうしたらいいんだ~」 私は、野菜づくりに思うような結果がでないことがずっと、何年も続いていました。このまま続けても先が見えてこない。そう悩んでいるところに、ある方から「北海道へ行きませんか!」と、お誘いを頂きました。
北海道の女満別の近くに伊藤秀幸さん(通称:ひでさん)の農場があります。無肥料栽培9年のベテラン農家さんです。きっと私の求める答えがあるはず! とってもウキウキワクワクしながら北海道へ向かいました。
広大な畑は伊藤さんそのもの
すごいなぁ~、伊藤さんの畑は広いぞ! 畑の広大な規模に圧倒されました。1枚の畑が数ヘクタール!。
私の住む地域では広い畑でも 枚数反という程度ですから伊藤さんの畑は規模でいえば10倍以上です。伊藤さんの畑は奥行き数百メートル。畑の先端が見えません。人参畑、たまねぎ畑は、雑草をひたすら手作業で除草するというから驚きます。
伊藤さんのご自宅を囲むハウスだけでも 1件の農家としてたるだけの規模がありながら、さらに露地畑で約20ヘクタールです。農家の視点からみれば、それだけの規模になるとどこかが手薄になり、粗雑になってしまうのではないかと思いますが、感激したのは伊藤さんの農場はどこの畑に行っても丁寧に管理が行き届いていました。作物たちも整然と育ち、ムラがない。伊藤さんの姿をそのまま反映しているように感じました。
広大な畑は、伊藤さんの大きな心と重なりました。大きな心は些細なことにとらわれることなく(わずらわしさをもたない)、おおらかで、なおかつ深く落ち着くものを感じます。そして、その大きな心の懐をもちながらも、小さなことも大切にしています。整然と並んだ野菜たちはとても貴賓があるように感じますが、どこにも堅苦しさがなく、とてもリラックスしています。愉快で、とても楽しんでいるような作物たちの印象を受けました。
伊藤さんと私の会話のなかでとても面白かったことがありました。(私)「野菜が急に全滅して全く収穫がなかったりしたときって、どうしても落ち込むし、どうしようと思って、辛いですが、伊藤さんってどうですか?」・・・(伊藤さん)「全然、そう思わないんだよなぁ~アハハハ!! どうにかなるんじゃないかなぁ~ あまり考えなくていいんだよなぁ~」・・・、そう返事を頂いたら、あっけにとられて、さすが伊藤さん!その心の広さスゴイです! 伊藤さんと話していると、とても心が楽になりました。
北海道の開拓者魂
女満別空港から北見、そして伊藤さんの住む訓子府、農場周辺の環境の景色を眺めていると、ひとつ発見がありました。この景色はどこかに似ているなぁ?。
10年前、私は大学時代の友人(留学生)を尋ねてブラジルまで行ったことがありました。ブラジルには北海道以上の広大な大地が広がっています。
なだらかな丘陵を拓いた農場に木立が並び、農家の家が転々とある風景が北海道と南米ではそっくりなのです(特に日系移民が多いサンパウロ州とパラナ州)。そういえば今年ブラジルでは日系移民開拓100周年の年だそうです。
農業環境と景色がそっくりなことにあわせて、開拓者としての活力と陽気な踊るような明るさはブラジルにも北海道の人たちにも同じように強く感じました。
ラテン語系の南米を表現すれば、まさしくカーニバルのサンバの踊りのようなイメージといえば分かるでしょうか。 TERRA SAMBA(訳:大地のサンバ!)」でした。私は、その開拓者たちの心意気と、大地と人が躍動するような力と、そこに拓かれた人々の暮らしの息づきや、大地の風景が大好きです。その空気を北海道で感じることができ、とても嬉しかったです。
●騒がしい野菜たち
6月といえば、畑仕事はとても忙しい季節です。
この時期に3日も休みをとって北海道へ行く事になるとは、まるで夢のようでした。北海道へ行く前は、まるで息をつく間もないほどに作業に追われて、全力疾走しているかのようでした。
私がゆとりなくカリカリしているから、野菜たちもどこかしら緊張して表情が堅苦しそうでした。けれども今回、私自身北海道へ行き、心も身体もリフレッシュしたからでしょうか。野菜たちもとても嬉しそうで楽しそうな表情に変わっていました。心って、大切ですね。
伊藤さんにお会いしてから、私はとても晴れ晴れした気持ちになりました。それは具体的な農業の技術や理論を学んだのではなく、野菜に対する接し方や心のもちかたを、伊藤さんを通じて感じる事ができたことがとても大きな収穫でした。
野菜畑に行くと、とても騒がしい気がします。今の季節は収穫を前に、野菜がどんどんと成長します。それにあわせて野菜ごとにお世話が必要です。朝、畑に出向けば最初に「おはよう。元気だったか?今日は、草取りするからね」「おまえ(作物)の、花って、綺麗だな!見せてくれてありがとう。」・・・帰るときは、「今日一日、ありがとう。おかげさまで草取りできたから、ちょっとは気持ちよく成長できるかな?、また明日くるから、また楽しみにしていてくれよ」・・・・
逆にハッとするときがあります「あっ、野菜たちが、ざわめいてる!!」 畑に出向くと、野菜たちが「おーい!こっちの草とってくれよ!」「私のほうも見てよ」「このツルが伸びてきたから、私(キュウリ)の側に支柱を立ててほしいなぁ~」「お~い、助けてくれよ。早くここに手をかけてくれないと、うまく伸びられないよ。」・・・・などなど、とてもにぎやかな気がします。
(2008.8)

