まるでクラッシック音楽が流れているかのような農園を・・・

もともと私は花が好きなので、農園には、できるだけ花を咲かせるように、周りに色々な季節折々の花々を植えています。植物にクラッシック音楽を聞かせると良い効果があると提言した人がいます。確かにそうだと思います。人が聞いていても気持ちよければ、自然に空間も同調し、植物もリラックスできると思います。

 野菜たちに声をかけて、愛情をもって育てると、どんな肥料よりも、一番の効果があるといわれる場合もあります。それも本当のことだと思います。広い畑に、スピーカーを置いて、音楽を流すのが良いのかもしれませんが、なかなかそういうわけにもいきません。それでひらめいたのが、花の栽培でした。畑の周りに沢山の花たちを咲かせることです。音楽が音での環境改善ならば、きっと、花は視覚に働きかける環境改善です。

私たちは、花の美しさを感じるとき、それはその色合いであったり形であったり、視覚で感じます。また、時には香りのときもあるかもしれません。そして、花にはそれ以上に無音の「美」の波調をあたり一面に放っているような気がすることがあります。 例えば、部屋のなかに一輪の花が飾ってあるだけで、その場の空気が変わるようなことを感じたことはないでしょうか。美と、癒しと、安らぎの存在感が花にはあるような気がします。

野菜たちの周りに花々が咲いている環境であれば、きっとそれは、まるでクラッシック音楽が流れているかのような空間がそこには広がっているような・・・・・・もちろん、そこで畑仕事をする私自身も、なんだか心が癒され、気持ちよくなりますね。

●ゴボウが土をつくる。ゴボウで得た収穫は?

越冬ゴボウの収穫のとき・・・。「ミニゴボウは掘るのは楽だけど、普通のゴボウのような形じゃないから、普通のお店には出せないなぁ、収穫しても販売は難しいかなぁ」と、悶々としながら作業をしていました。

そこで妻がひょっこりと手伝いに来て言いました。「あなた、なにそんな暗い顔して掘っているの? そんな目先の収穫よりも、これ見てよ。土がフカフカで暖かい! こんなに土が良くなってる。ゴボウってすごいね。

ここで次に育つ野菜が楽しみ!」。 なるほど。よく見るとゴボウからは細根が四方八方にビッシリ土に伸びていて、ゴボウが育った場所の土は確かにフカフカで暖かい感じがします。

そして力強く真下に伸びた太い根っこは畑の深いところの岩盤のような土の層に至って、土を深くまで柔らかくしようとしてくれています。ゴボウがもたらしてくれた収穫は、ゴボウそのものだけではなく、そこに新たに生れた豊かな土壌だったと気づかされました。 その後、私は一転して気分が晴れて、ゴボウの1本1本に「土をよくしてくれたんだなぁ、ありがとう。すごい収穫だなぁ」と、お礼を言いながら楽しく作業をすることができました。

ゴボウの後には、トウガンを植える予定です。まるで枕のような大きなトウガンになるかなぁ?まだまだ夢枕。トウガンは今年はじめて栽培します。9月ころ収穫です。

●青の世界、山々と空、空気、水、大地は光る

畑からは標高3000mほどの日本アルプスの連山をはっきり見る事ができます。

残雪が白く輝き、その下には深い森をもつ山々が重なり合っています。高台にある畑はまるで舞台のようです。畑から天気が良い日はいつでもこの景色を望むことができます。

雪山は偉大で、大きく構える姿は、強く澄み切った純粋性を感じます。農作業の合間にボーっと、山を眺めると、心がスカーッと澄み切ってきます。あるとき気づいた事がありました。

大地が青いことを・・・。山々の雪渓の合間に現れる岩壁は近くで見れば灰色かもしれませんが、遠くから望むと青く見えてきます。遠くに見える森も緑色ではなく、青く見えます。そういえば画家・東山魁夷は自然の森の風景画を好んで描きましたが、その木々全体は青色を基調にして描かれているものが多いようです。

私にとって、大空と大地は青く一体のものとして映ってきます。空の青色を反射して大地が青く光るのか、もしくは大地が空を青くさせているのか、私には分かりませんが・・・。

そしてまた、宇宙から地球を見ると、地球は青くみえるそうです。それは地球の大部分を占める海が青く見えるからだといわれますが、もしかして陸地までも青く見ているかもしれません。地球は水の惑星といわれますが、水は大気を構成し、雲を生みだし、その雨は大地を水の潤いで満たします。

そしてその水は、大地に息づく木々やあらゆる植物の体内細部にまで脈々に流れゆきわたり、命を与えます。地球にとっての水は海や川だけにあるのではありません。

私が見た山々と空が青く光って見えたのは、地球上の全てのものに共通して流れる「水の美」がそうさせたのかもしれません。

毎日のよろこび

朝4時30分ころに畑に向かいます。

まもなく日の出の太陽が出始めます。毎朝のよろこびです。ある画家さんが「絵を描くのに、富士山はモチーフ(主題)にしないほうがいい」と言っていました。それはその対象(モチーフ)があまりにも偉大で美しいため、どれほど絵にしても実景と絵では、どうしても絵のほうが劣ってしまうからだそうです。

私が見る朝陽も絵にはできないほどの美しさがあります。その姿は毎日違い、刻々と絶え間なく移り変わる光と雲の美の世界は感動的です。日の出の太陽は空に昇っていくスピードが違います。とても早く、あっというまに随分高いところに落ち着いてしまいます。

植物はこの朝のひとときが一番のびのびとしている様子です。一日の中で最も神秘的な時間です。

「農家は朝が早くて大変な仕事ですね」と言われることがありますが、私にとってはこの朝の太陽を見るのがとても楽しみで、そのために朝早く起きたくなります。このように大自然にふれられる喜び。身体も心も元気で、農業に携わらせていただける喜びをいつも感じます。

(2008.5)

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