天然発酵熟成とは?そうは言えないものが多い

味噌ができあがるための時間をおおよそ1年

その1年のなかで仕込みの時間はあっという間の一瞬です。私たち人間は、見える世界として人の力でできることってとても限られています。味噌を美味しくさせるための時間は、人の力の及ばないところのはるかに長い時間が必要で、実は私たちは見えない世界、人の力の及ばない世界の影響力のほうがずっと大きいということを感じます。そして私たちはその見えない世界の恩恵のもとに生き、生かされているということを味噌づくりから教えられているような気がします。

「長期熟成」や「天然熟成」と表現できるものは、とても少ない現実

これを言葉で表現すると、「長期熟成」とか「天然熟成」と言われます。味噌はおおむね1年で完成が目安ですが、愛知県の八丁味噌になると3年熟成です。醤油でいえば2年熟成。この醤油のラベルには「天然醸造」(参考天然醸造醤油とは|しょうゆの豆知識|日本食文化の醤油を知る)と書いています。

菌達が働くということと、発酵食品ということからいえば、「天然醸造」は当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、実はこの「天然」と表現できる醤油は実はとても少なく、日本の醤油の製造量の約1%ともいわれています。(参考天然醸造醤油と本醸造醤油の違いは無添加!通販で買える商品も紹介 -Food for Well-being-かわしま屋

天然と言えなかったら何ですか?発酵食品だから菌が働いているからどれも天然ではないのですか? 天然と言ってもただ格好つけのために書いているのかなぁと思いがちですが、天然醸造と書けるためにはJAS法でのルールがあって、その規定にはまる「天然醸造」というのは結構難しいのです。本醸造という分類もありますが、本というだけあって、本物?と勘違いする場合もあります。本醸造と言われるものは日本の醤油製造量の全体の8割になりますが、天然醸造醤油との決定的な違いは食品添加物を使っていないということです。また、本来の醤油の旨味を引き出すには2年以上の熟成が必要と言われています。

本醸造醤油のなかには温醸法や即醸法といわれるものが多く、仕込んでから約1~3か月ほどで完成させるものがあります。えっ?菌達の働きってじっくり1年以上かかってこそ美味しさが生まれるじゃなかったの?と思ってしまいますが、それは仕込みを行ってから温度を急激にあげて急激に発酵を促進させる方法が行われています。

熟成しない発酵食品が多い(即醸法という)

先ほど、熟成には日本の四季が必要で、それぞれの季節と気温によって働く菌たちの種類も変わってゆくということを説明しましたが、この即醸法による加温方式のときは、確かに発酵がおこりますが、季節感でのイメージでいうと暑いときの夏に働く菌だけの単独疾走のような感じになります。

そうすると、ほかの季節に働く菌達の出番がないから、結果できあがったものがどうもコクがない、味わいの幅がない、旨味がないということになってしまいます。そこでメーカーさんはそれでは美味しくないし売れないということで、いろいろな調味料を入れて、あたかもじっくり熟成したかのような味をつけて整えてしまいます。食品表示でみられる調味料(アミノ酸等)、果糖ブドウ糖液糖、甘味料(ステビア、カンゾウ)などがあります。

熟成していない発酵食品は、添加物が多くなってる

極端になると醤油や味噌なのになぜかダシや旨味調味料が入っていたりするのもこのためです。加温させる方法や、すみやかな発酵を促すための酵素剤(発酵促進剤)を使用されることもあります。本醸造と天然醸造の違いは、どちらも発酵してはいるけども本醸造は食品添加物が入ることが認められているのに対し、天然醸造は食品添加物が一切用いられていないという分類になります。味噌の場合は天然熟成と言います。

本物の美味しさにたどり着くためには長い年月が必要です。熟成環境を人為的にコントロールしてしまう熟成に対して、春から夏、秋そして冬までの期間を個性豊かないろいろな菌達に働いてもらうことが大切です。

発酵しない、なんちゃって発酵食品が多い日本の現実

どうしてプロの味噌や醤油屋さんはプロなのに天然醸造させずに即席的に作ったような、ある意味まがいもの?といったら失礼かもしれませんが、本当の発酵食品と「なんちゃって発酵食品」とでもいいましょうか。どうしてそのようなものを製造販売してしまうのかという疑問があると思います。その答えは結構単純だと思います。基本1年以上かけて作るものを、わずか数か月でできてしまったら、例えば小さな工場でも1年間でできる量が、なんと5~6倍の量ができてしまいます。

そうするとコストは下がって、同じ施設規模でも製造量が飛躍的にあがるから、売り上げがどんどん上がります。足りない味は調味料で安定した美味しさに作り上げてしまえばいいから、ということで、じつは日本の発酵食品の多くが同じように、発酵させない食品が多くなってきており、代わりに発酵で得られた美味しさを調味料で補う構図が生まれるから、今では発酵食品の大国日本とは言えなくて、添加物の大国日本になってしまったのでしょう。

味噌、醤油はもとよりお酒、お漬物、いろいろなものが、なんちゃって発酵食品になってしまっているのはとても悲しいことです。

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